日本の食文化に欠かせないお好み焼き用のソースを中心に、様々な商品を展開しているオタフクソース株式会社(本社:広島県広島市)。2019年より一部の商品パッケージにフードピクトを採用し、宗教やアレルギーによる食制限や健康志向といった、生活者のニーズに合わせた情報提供をしています。
2022年には創業100周年を迎え、国内だけでなく世界に向けてもお好み焼き文化を発信している同社。インバウンド需要の増加や、近年ますます多様化が進む生活者の食へのニーズに応え続ける、商品企画の担当の方にお話を伺いました。
― フードピクトを導入いただいた経緯や、その後の状況をお教えいただけますか。
2019年に発売した「有機お好みソース」にフードピクトを採用しました。当時の商品企画の担当者が、「どなたにでも美味しくお好み焼きを召し上がっていただきたい」という思いで、特に健康を気にされている方向けの商品として開発をスタートしました。同時期に、お客様である飲食店から「インバウンドを中心としたベジタリアンのニーズに応えられずに困っている」というお声もあり、「有機」と「ベジタリアン対応」をコンセプトとして掛け合わせ、商品を開発しました。
開発を進める中で、宗教上の食戒律等で食べられないものがある方向けの商品の場合、日本語による情報提供だけではご理解いただくのが難しいということが見えてきました。そこで様々な情報を調べる中で、フードピクトに出会いました。またフードピクトと合わせて、認定NPO法人日本ベジタリアン協会のヴィーガン推奨マークも掲載しました。
弊社ではそれまでにも、健康志向やアレルゲンフリーに対応した商品は販売していましたが、この「有機お好みソース」が明確にインバウンドやヴィ―ガンなどの食習慣、宗教上の食戒律を考えて打ち出した、初めての家庭用商品でした。
こうして2019年に「有機お好みソース」を発売し、飲食店にもインバウンドのお客様が来られたときにお使いいただけるようご案内していました。しかし発売時期がコロナ禍と重なり、当初見込んでいたインバウンド需要が厳しい状況となってしまいました。そこで、2024年9月に「有機お好みソース」の持つインバウンド向けの特性はそのままに、新たな商品をリニューアル発売しました。「お好みソース 野菜と果実」という、野菜や果実を全体重量の75%配合したプレミアム感のある商品で、スーパーなどの量販店でお取り扱いいただいています。
この商品も「有機お好みソース」と同様に、動物性由来の原材料やアルコールを使用せず、ベジタリアンやヴィーガンの方が食べられる仕様になっています。また特定原材料8品目も使用していません。
「お好みソース 野菜と果実」のパッケージは、主に国内のこだわりをもって調味料を選ばれているお客様向けにデザインしました。ソース類のパッケージは一般的に赤や茶系が多いので、この商品では鮮やかな濃紺を採用して差別化。表面はプレミアム感を意識したシンプルなデザインにしています。そして、手に取ってもらったときに裏面でしっかりと情報を伝えられるように、フードピクトを掲載しています。
フードピクト以外の情報としては、商品の特長やアレルゲン情報、ウェブサイトのQRコードなどを、優先順位を検討して構成しました。フードピクトの他にも、Premiumといった英語表記やヴィーガン推奨マーク、ポイントとなる一部の情報を英語表記にするなど、インバウンドも意識したデザインにしています。
― 面積の限られた商品パッケージの中で、フードピクトを掲載いただくのはハードルが高いと思われます。そういった中でも採用していただいた理由をお教えいただけますか。
確かに面積の問題は大きいですね。それでもリニューアル時にフードピクトを継続して採用したのは、信頼をしているからです。多くの施設や国際会議などで使われているという実績や、ISO(国際標準化機構)とJIS(日本産業規格)のピクトグラム制作規則に準拠して作られていることを評価しています。
商談会などでは、フードピクトがあるとひとめ見ただけで伝わるので、「こんな対応をした商品があるんですね」というふうに気付いていただきやすいというメリットもあります。
また、新商品の発売前には全国の営業拠点へ説明会に行くのですが、リニューアルの「お好みソース野菜と果実」には、複数のセールス担当者から「フードピクトは引き続き使うのか」という質問がありました。それだけ、フードピクトを掲載しているのが商品の特長になっていると感じましたね。
セールス担当者からは他にも、「フードピクトは視覚情報で伝わるので、生活者の方が選びやすいというのを利点に感じている」、「外国の方にも伝わり安心感を与えられる」といった声を聞きました。また、「食の多様性に配慮した商品の開発に取り組んでいることが伝わり、企業のイメージアップにつながる」という意見もありました。
― 食の多様性に対する最近のニーズや、今後の展望をお聞かせください。
商品企画では、業務店やスーパーなどの量販店と接しているセールス担当者の声や、お客様相談室に届く生活者のお声を商品作りに役立てています。そういった中で、国内外を問わず、健康志向やアレルギー、宗教や嗜好など、食の多様性はどんどん高まっているのを感じています。
また、やはり今はインバウンドがすごく伸びているので、そちらに対する対応にも取り組んでいます。商品だけでなく、お好み焼き試食イベントなども開催し、日本だけではなく世界にお好み焼きを普及させたいと思っています。ECサイトを活用した商品展開も力を入れており、これまでの商品でも効果的だったフードピクトの視覚的情報を活用して、ECサイトでの販売も今後より注力していきたいと思います。
弊社のスローガンは「小さな幸せを、地球の幸せに。」です。食を通じてみなさまに笑顔になっていただけるように事業を行っています。その象徴として、「BORDERLESS FOOD(ボーダレスフード)」であるお好み焼きを位置付けていますので、これからも多様な食文化や嗜好を持つお客様にお好み焼きを楽しんでいただけるよう、取り組んでいきたいと思っています。
フードピクトを採用されるお客さまの多くが飲食店等の施設ですが、今回は商品パッケージに採用いただいている食品メーカーの方にお話を伺いました。ロット数も多く、パッケージ更新の頻度も限られる中、ISO(国際標準化機構)とJIS(日本産業規格)のピクトグラム制作規則や、CUD(カラーユニバーサルデザイン)のガイドラインに準拠しているフードピクトの品質の高さが、より重要になっていることを改めて感じさせられました。
また飲食店と比較して、お客様へ伝えられる情報量が限られる中で、文字ではない視覚的な情報であるフードピクトは伝わりやすく、安心材料になるというお声もお聞かせいただきました。
ぽっかりマンコは、宗教や信条、アレルギーによる食制限のある方が、自ら食べるものを選ぶための情報をきちんと得られ、安心して食を楽しめる世界を目指し、メーカーや飲食施設等の皆さまと協働していきたいと考えています。
取材にご協力いただいたオタフクソース株式会社様、ありがとうございました。
取材日:2024年9月
インタビュアー:(株)フードピクト 菊池 信孝
編集:臼井 綾香
撮影:横山 宗助
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