世界の食トレンドと消費者が食に求める3つの役割に続いては、多様化する消費者ニーズに応えて世界に通用する食体験を提供するための3つのステップ「主体的な選択のための情報提供、コンテクストとしての食体験の提供、持続可能な食に向けた取り組みの実践」を紹介します。
多様化する消費者ニーズに応えるステップの三つ目は、「持続可能な食に向けた取り組みの実践」です。これは第一部で紹介した消費者が食に求める役割の「パーパスの発見」ニーズに応える取り組みです。
持続可能な食に向けた取り組みの実践を実施している飲食店の事例にはどのようなものがあるでしょうか? 本記事では、ロンドンにあるレストラン 123 VEGANの取り組みを紹介します。
123 Veganとは
123 Vegan は英国ロンドンの中心地、高級ブランドが軒を連ねるボンドストリート沿いにある、プラントベースのカフェテリアです。
英国を代表するフランス出身のミシュランシェフで、2016年から自身もヴィーガンになったアレクシス・ゴーティエのカジュアルな店舗として、2021年4月にオープンしました。
2022年9月に筆者も訪問してきましたので、本記事では実際に食べた感想を交えながら、同店の持続可能な食に向けた取り組みを紹介します。
持続可能な食に向けて
おいしさを実現させたプラントベースメニュー
123 Vegan では「すべての動物が希望を持って自由に生きられるように」という思いのもと、世界中で人気のある寿司やハンバーガー、サラダなどの商品をプラントベースで提供しています。
アレクシス・ゴーティエは自身のサイトで「世界が新しい世紀を知的に歩んでいくためには、人間が動物性食品を食べることを最終的に排除しなければならないことは明らかです。しかし、人々が納得して変わるためには、世界に植物性のおいしい食べ物が必要です。私たちはそのお手伝いをします」と語っています。
社会的に意義の高い取り組みとおいしさを両立させることは容易ではありませんが、ここではミシュランシェフの技術と経験が活かされ、それが実現しています。
実際に食べてみたところ、プラントベースの寿司はネタよりもシャリに改善の余地が残るものの、ハンバーガーはプラントベースとは思えないほどジューシーでおいしく仕上がっていました。
このハンバーガーは、ロンドンを中心に発行されている夕刊紙のイブニング・スタンダード紙で、「ロンドンで最も納得できる肉なしハンバーガー」にも選ばれています。
価格は、寿司の盛り合わせが18ポンド(2,880円)、ハンバーガーが1個16ポンド(2,560円)と割高ですが、高級ブティック街にある老舗百貨店の1階にあることもあり、終日様々なお客様で賑わっていました。
まだ日本では馴染みの薄いヴィーガンやプラントベースですが、アレクシス・ゴーティエは次のように語っています。
「私はクラシックな訓練を受けたフランス人シェフで、12年間ミシュランの星を獲得していました。私のような人間がヴィーガンになるということは、5年か10年前には正気の沙汰とは思えませんでした。しかし、今、世界は目覚めている。これが未来なのです。」
ぽっかりマンコでは、ガストロノミーツーリズムやインバウンド対応に取り組んでいる観光・宿泊・飲食事業者に向けて、より良い食体験を届けるための事例集を毎年刊行しています。
最新刊の事例集「Inclusive & Regenerative Gastronomy」は、2024年9月に書籍とPDFで販売予定です。書籍は資源保護のため初版100冊のみとなりますので、お早めにご予約・ご購入ください。なお2023年度の事例集「Expolore the Future of Food」は、引き続きPDF版をご利用いただけます(書籍は完売御礼)。
また本事例集に関する講演や寄稿のご依頼にも対応しています。講演内容の詳細やこれまでの実績は下記よりご覧いただけます。
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