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[事例2]Farm to Table おいしい料理と農場ツアーでファンをつくる|Blue Hill at Stone Barns


 世界の食トレンドと消費者が食に求める3つの役割記事はこちらで紹介した通り、食事が栄養補給から自己実現への手段へと変化するなか、消費者が食に求める役割は、主体的な選択、コミュニティへの帰属、パーパスの発見の3つに分けることができます。


 このうち「主体的な選択」をしたい消費者のニーズを満たしてくれる飲食店の事例には、どのようなものがあるでしょうか? 本記事ではアメリカのBlue Hill at Stone Barns(ブルーヒル)の取り組みを紹介します。



 

Blue Hill at Stone Barns とは


 Blue Hill at Stone Barns(以下「ブルーヒル」と記載)は、アメリカでオーガニックの母と呼ばれるアリス・ウォータースの教え子であり、第三の皿を提唱するシェフのダン・バーバーが2004年に造った、Farm to Table(農場から食卓まで)の世界観を体現する農場併設のレストランです。


 現在ブルーヒルはミシュランガイドで二つ星と、サステナビリティを積極的に推進しているレストランに与えられるグリーンスターを獲得しています。


ぽっかりマンコ
ブルーヒルのメインエントランス|筆者撮影(2022年9月)

 

 ブルーヒルでは自社農園で栽培した有機野菜を使った料理を提供している他、Farm to Table の世界観を体験できるツアーを開催し、食に関する取り組みと知識を消費者に提供しています。

 

 2022年9月に世界中から訪れるファンに混じって、筆者もツアーに参加してきました。本記事ではその様子も交えながら、主体的な選択をしたい消費者のニーズをどのように満たしているのかを紹介します。




Farm to Table の世界観を体験するツアープログラム


 ニューヨークの中心部にあるグランド・セントラル駅から電車に乗って1時間。さらにそこからタクシーで15分ほど山に入ったところにブルーヒルはあります。

 

 広大な敷地には、レストランやイノベーションラボがある建物を中心に、野菜や肉を購入できるファームスタンドや、有機栽培で野菜を育てている畑やハウスが広がります。

 

 ブルーヒルの取り組みを学べる体験ツアーは、1回につき5組10名程度の少人数グループで開催されます。この日は日本から参加した筆者のほかに、香港、ブルックリン、マンハッタンから参加者が集まりました。

 

 ツアーは農場の責任者をはじめ、厨房からも料理担当やパン担当のシェフ、イノベーションラボからは研究員も案内役として参加します。それぞれの現場で働いている人が日替わりで担当し、参加者と対話をしながらブルーヒルの取り組みを紹介していきます。

 

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ツアーは和気あいあいと対話をしながら敷地内を巡ります|筆者撮影(2022年9月)

 例えば、畑では農場の責任者がアメリカの畑の多くは平らに整地するのに対し、ここでは土壌にダメージを与えないように元の地形のままで使っていることや、畑では多品種を混合栽培して草もある程度は生えっぱなしにしていること。


 また同じ野菜でも複数の種類を植えていることや、使う畑と休ませる畑があること。休ませる畑では土壌を回復させるために蕎麦を育てていることや、レストランのメニューは決まっておらずその時々に採れる野菜で構成することなどを教えてくれました。

 

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農場責任者とシェフが野菜づくりについて畑で紹介|筆者撮影(2022年9月)

 またパンを焼いている厨房ではシェフが試食を配りながら、自家製の麹を使い全粒粉でつくっていることや、厨房のなかにある製粉機で毎日轢いた粉から焼いていること、キッチンで使う味噌も全て自分達でつくってることなど、ブルーヒルで提供される料理の背景について紹介してくれました。


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とてもフレンドリーでホスピタリティあふれるスタッフ|筆者撮影(2022年9月)

 ツアーの終盤は、イノベーションラボの見学です。


 ラボの研究員から、ブルーヒルで発生する残渣は全て敷地内にあるコンポストで肥料にして畑で再利用していることや、食べられない動物の骨や野菜の芯は高温で炭にしてBBQ料理の燃料として利用していること、皮や毛も雑貨や食器として利用していることなど、サステナビリティに関する最新の研究内容が紹介されました。


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いただく命はすべて使い切るイノベーションラボの取り組み|筆者撮影(2022年9月)



自社農園の有機野菜を使った料理


 約1時間のツアーを楽しんだ後は、お待ちかねの食事です。


 この日は貸切イベントの準備のため、カフェテリアでのランチ営業のみでしたが、それでも一品ずつシェフが目の前で取り分けて、食材や料理のこだわりについて紹介してくれました。

 

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料理は一品ずつ説明しながら提供されます|筆者撮影(2022年9月)

 この日のメニューは、野菜と果物が入ったトマトのガスパチョ、グラスフェッドビーフのローストビーフ、トマトのサラダと山羊のミルクのドレッシング、全粒粉のパン、豆のサラダ、自家製チーズとバジルソース、濃厚なトマトソース、桃のタルトケーキでした。

 

 見た目はシンプルな料理ですが食材の組み合わせがよく、噛むたびに素材のおいしさを楽しめる素敵なランチでした。ツアーの効果により自分が何を食べているのかをしっかり意識しながら味わえるのも、ブルーヒルが世界中のファンを集めている理由だと感じました。


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その日に採れた野菜からつくるランチプレート|筆者撮影(2022年9月)


 

 ぽっかりマンコでは、ガストロノミーツーリズムやインバウンド対応に取り組んでいる観光・宿泊・飲食事業者に向けて、より良い食体験を届けるための事例集を毎年刊行しています。


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